プルルルル…プルルル…

――ピッ

『――土方だ』
『もしもっしぃ、土方君?今どこ?』
『…万事屋?何だよ』
『何だよって。おまえ今日さー、俺んち来るとか言ってなかった?言ってたよな?』
『………あ』
『あ、じゃねェよ!なに?忘れてたのか?こちとら「お仕事忙しいのかなー」とか思いながらずっと待ってたっつーのに忘れてたんですかコノヤロー』
『ぐ』
『オイオイ勘弁しろよお前なァ。いくら銀さんが心広くても限度ってモンがあるよ?仏の顔も何とやらだよ?』
『テメェのどこが仏だァァ!………30分待ってろ。行く』
『は?ちょ』

ブッ、――ツー、ツー、ツー




ガララッ

「おー、来たか。つーかお前さァ、一方的に電話切んなよ。マナーを守れマナーを」
「うるせェ」
「ちょ、うるせぇってお前な!約束忘れといて…って、アレ?」
「何だよ」
「いやお前、なんか髪濡れてね?」
「ああ…」
「え?何で?雨降ってたか?」
「いや、風呂浴びてきた。外での仕事の後で汚れてたんだよ」
「…………」
「…何だその目は」
「……いや、別にちょっと待ってろ。タオル持ってくっから」

パタパタパタ…

(…つーかさァ、アレ、電話切った後で風呂入ったってことだよな?それなのにキッチリ30分以内ってことは、ものっそカラスの行水に猛ダッシュじゃね?髪拭く間も無く走って来たってことだろ?ちょ、それって何つーか…)

「可愛いじゃねーかコノヤロォォォ!」
「アァ!?何いきなり叫んでやがんだテメェは!…ってうおっ!?」
「はいはい暴れない暴れないー。拭いてやるから」
「いらねェよ!離せ!」
「ダーメだって。そのままにしといたら風邪ひくだろーが」
「気持ち悪ッ!」
「え?もう吐き気?風邪の症状早くね?」
「違ェよ!テメェに気遣われんのが気持ち悪ィ」
「ちょ!それひどくね!?この優しい銀さんに向かって!」
「テメェが優しいとか、何か裏があるとしか思えねェ」
「おっ前なァ…!もうちょっと素直に受け取れや!…ったく」

ワシャワシャワシャ

「…………」
「…お前、髪キレイだよなー」
「気持ち悪ッ」
「ちょ!それひどくね!?ってまたこの流れか!」
「…何なんだよお前今日」
「あ?」
「約束忘れて遅れて来たっつーのに怒らねェし。何も要求して来ねェし」
「…あー…何か要求されると思ってたんだ?」
「………いつもならそうだろうが」
「あー、まァ、ね。…でもまあ今日は、要求するまでも無いっつーか」
「あ?」

ワシャワシャ…ピタ

「よし、これで大体乾いたか?」
「ああ……悪ィ、な」
「いやいや。気にすんなよ」
「…ホント何なんだよ今日…」
「ま、俺ァ今すっげー機嫌いいから」
「はァ?…何で」
「何でって、そりゃあ…ねぇ?」
「な、んだよ、その、目、は……つーか近い近い近…!」



「恋人の家に来るのにわざわざ風呂浴びてくるってことの意味、わかってますかー?十四郎くーん?」


「―――――っ!!」



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無自覚トシ。


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