バッ

――パチン



バッ

――パチン




「あああもうウルサイなぁバッパチバッパチバッパチィィィ!!さっきから何なんですか銀さん!扇子を開いたり閉じたりするのの何がそんなに楽しいんだアンタはァァ!」

ガシャアァン!

「お前のその突っ込みの方がうるさいんですけど。…それに、俺ァ別に楽しくてやってるわけじゃねーって」
「じゃあ一体何なんですか?その音、ものすごい気になるんですけど」
「あー、音か。音ね。なるほど、その手もあるな」
「は?どういうことですか?」

――パチン

「いや、土方にね」
「は?土方さん?…って言うと、あのカッコ良くて仕事もデキていかにも女の人にモテそうなのに何の間違いか銀さんに捕まっちゃって、お気の毒にも日々アンタの変態嗜好に付き合わされていると噂の土方検事ですか?」
「ちょ、新八君新八君?俺だってちょっとは傷付くからね。ていうか誰に聞いたのそんなこと」
「お二人を知る人なら誰でも言ってますよ。で、その何かの間違いでアンタに付き合わされてる土方さんがどうかしたんですか?」
「間違いなんかじゃないですよ〜。俺は土方のデステニィだから」
「そんな某ウ○スタンショーみたいな主張いりませんよ」
「お前ね、そんな風に人の言い分をロクに聞きもしないで切り捨ててるようじゃ、いつまで経っても一人前の弁護士にはなれねェよ?一生使えねェ助手どまりだよ?」
「使えないとは何だァァァ!誰のおかげでこの狭い事務所がいつもそこそこキレイに保たれてると思ってるんだこの変態弁護士!」
「いや、さっきも言ってたけどその変態ってのは何だよ。俺のどこが変態だコノヤロー。名誉毀損で訴えんぞ」
「ネクタイで目隠ししたりベルトで腕縛ってみたり変な玩具使ったり真昼間の事務所で襲ったり、終いには土方さんが泣いて懇願するまで焦らしプレイしたりしてる人が何言ってんですか」
「アレ?何で知ってんの?」
「あっさり認めんなァァァ!ちょっとは悪びれろ!せめて羞じろ!っていうかホントにヤってんですかアンタ!沖田さんに聞いたことだから話半分ぐらいで聞いてたのに!」
「あーアイツか。え、てことは何?総一郎君は土方からそんなこと聞き出したりしてるわけ?うわーオイオイ敏腕検事は怖いねェ。一体どんなテクを使ったらあの土方の口からそんなハズカシイ事実を告白させることができんだよ。今度教えてもらうか」
「そんなドSテクニック学ぼうとすんなァァァ!」

ガシャアァァン!!

「お前、突っ込みの度に資料ひっくり返すのやめろよ。誰が掃除すると思ってんだ」
「僕ですよ!さも自分が掃除してるみたいに言うのやめてくんない!?……はぁ…で?ぶっちゃけもう聞くのも面倒くさいんですけど、土方さんと扇子にどんな関係があるんですか?」
「研究だよ研究。銀さんも土方のために日々頭使ってるわけよ」
「はぁ?…研究って、何の」

「そんなもん、効果的な扇子の使い方に決まってんだろ」

「………使い方、って」
「いや、今まであんまり活用してなかったけどさ。扇子ってかなりイイ小道具だと思わねェ?使いようによっちゃ相当土方を揺さぶれると思うんだよな。やっぱ普段から持ち歩いてるモンこそ有効利用しなきゃだろ?」
「…………」
「土方がフと扇子を見た時につい思い出して、一人で赤面するようになったりしたら最高じゃね?とか思ってたんだけど…そうか、音か。扇子の閉じる音に反応する土方、とか……イイ。うん、イイな」
「……………」


(………すいません、土方さん)

(僕、何だか余計な入れ知恵をしてしまったみたいです……)



翌日。



「よ、土方」
「………おう」
「アレ?なに、何で一歩後ずさんの?お前明日休みだから今夜俺んち来るって言ったよな?だから俺迎えに来たんですけど」
「…ああ」
「ホラ、向こうに車停めてあっから」


ガチャ
――バタン


「あー、やっぱクーラーつけねェと暑ィな。もう夏だねー」

バッ

「―っ!」
「…へ?どした?扇子開いただけなのに何でそんな過剰反応?」
「……な、んでも、ねェ」
「いやいや何でもねェこたねェだろ。何でそんなドアギリギリ一杯まで俺から離れるの。ちゃんと座ってシートベルトしろって。そのまま走ったら道交法違反だろ検事さん」
「………」
「ああ、お前もやっぱ暑い?扇いでほしいのか?」
「っいらねぇ!!」
「は?ちょ、何その警戒心バリバリの目。親切で言ったのに銀さん傷付くんですけど」
「何が親切だこの変態!」
「へ。待て待て。確かに俺はいつもちょーっとだけ変態チックなことをお前とシてるけど、今の俺の言動のどこに変態的要素があった?」
「どこがちょっとだコラァァ!それに『お前と』じゃなくて『お前に』だろ!毎回毎回一方的に好き勝手しやがって…!」
「や、お前だっていつも最終的には楽しんでんじゃん」
「楽しんでねェェェ!」
「その異議は却下。この前なんか『もうイカせて』って俺に縋ってきたくせに」
「〜〜っ、そ、れはテメェが人のナニ縛った上にネチネチネチネチしつっこく身体中弄りまわしてきやがったせいじゃねェかァァァア!!」
「わー、そんな大声でソンナコト、土方検事ったらダイターン」
「うるせぇこの変態弁護士!」
「あ、それだ」
「ア?」
「さっきの俺のどこに変態要素があった?俺、暑かったから扇子開いて、親切で扇いでやろうかって言っただけなんですけど?」
「…………」
「オイオイ、理由も無く人を誹謗中傷ですか?検事がそんなことでいいんですかコノヤロー」
「…お前んトコの、メガネが」
「へ?新八が?なに?」

「テメェが、扇子使って俺をどうこうしようとしてるから気を付けろって」


「………………あー…」
「…やっぱり心当たりがあんじゃねェかこの変態」
「いや……それ、さ」

――パチン

「単純に」

――バッ

「どういう風に扇子開いたらカッコイイかなー、みてぇな。こうやって口元隠して流し目したりしたらお前グッと来ねぇかな、とか。そういう決めポーズ的なもんを考えてたんですけど」
「………は」
「いや、ね。ホラ、やっぱ普段から持ち歩いてるモンだし?どうせならカッコよく使いてェじゃん?パシッと扇子閉じる仕草がイイなーとか、ネクタイ緩めて首元に風を送り込んでる姿がセクシーだなーとか、そんな風にお前に思ってもらいたかったっつーか…最終的には、お前が扇子見たり音聞いたりしただけで俺のこと思い出すようになって、そんな自分を恥らって赤くなってたりしたら最高に可愛いなーとか、そういうことを考えて、たんだけど…な」
「――!」


「…で?そちらは何を考えてたんですか?土方検事ー?」
「〜〜〜〜っ!」


「アレ〜?顔が赤いですけど?どうかしました?」
「っ、テメ…ッ」
「はいはい、シートベルト付けて下さいねー」
「は?って、うぉ…!」

ブオォン

「ちょ、何いきなり発進させてんだコラ危ねェだろうが!」
「いやいや、だって早く家に帰らねーと」
「あァ!?」


「検事さんからせっかくのご要望だし、ここはご期待に応えてあげませんと。ね?」


「――!?なっ、だ、誰がいつ何の要望をしたコラァァァア!!」
「俺はそんなの全然まったくコレっぽっちも思い付きもしなかったけど、土方がそんなにシたいっつーなら仕方ねーよなァ」
「んなこと一言も言ってねェだろうが!!」
「いや参ったね。検事さんてばストイックな顔して実は…」
「テメ、聞けコラ!俺ァ要望なんかしてねェっつって…!」



「いやー、楽しみだな。扇子プレイ」
「誰がやるかァァァアア!!」




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変態銀ちゃんでスイマセン(笑)

…重要なのは、この後、なのだと…判ってます。判ってはいるんです。
でも、今日のところはコレで勘弁して下さいKさんTさん…(泣)


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